ムール貝
南ポルトガルとスペイン北部の沿岸で養殖されたムール貝は、成長するにつれて海の水質を自然に改善し、海洋養殖の修復モデルを提供しています。プリッとした食感のムール貝は、磯の香りと甘みがあり、たんぱく質も豊富です。
栄養:小さくても偉大
ムール貝は、食物連鎖の下位に位置するという環境的な利点を持ちながら、大型の魚と同じくらい多くの栄養素を含んでいます。
完全たんぱく質であるムール貝には、筋肉や皮膚を作るのに必要な必須アミノ酸がすべて含まれています。また、赤血球を健康に保つビタミンB12の含有量も桁外れです。当社のムール貝1個分には、このビタミンの1日摂取量の1000%も含まれています。
調達: 沿岸での収穫
パタゴニア プロビジョンズの地中海産ムール貝(ムラサキイガイ)は、スペインのガリシア沖とポルトガルのサグレス沖で養殖されています。どちらの産地でも、同様に豊かで香ばしい風味を持つ優れたムール貝が生産されています。
スペイン:ムール貝はガリシア地方原産で、大西洋からの上昇気流が栄養分と植物プランクトン(天然の餌)を運んでくるおかげで、自然に繁栄します。当社のムール貝は、ガリシアのリア・デ・アロウサにあるEUオーガニック認定の養殖場から仕入れています。
春になると、ムール貝の種(稚貝)が12メートルほどのロープにかけられ、バテア(大きな木製のいかだ)から垂直に吊るされます。この湾では塩分濃度が34%前後に保たれるため、ムール貝の成長は早く(他の場所では13カ月であるのに対し、この湾では8~9カ月)、成熟すると、地元の養殖業者が収穫のためにムール貝を引き上げます。コンセルバス・アントニオ・ペレス・ラフエンテ社は、100年以上続くこの地方の缶詰工場で、ムール貝を蒸して、缶詰の調味料を薄める余分な水分を除きます。通常、この煮汁は廃棄されますが、ペレス・ラフエンテ社では、地中海の調味料とエクストラ・ヴァージン・オリーブオイルとともに、各缶に少しずつ加えていまする。その結果、廃棄物が減り、缶から直接飲めるほどおいしい汁ができるのです。
ポルトガル:ムール貝はこの地域にも自生しています。私たちのパートナーは、ポルトガルの南西端の沖合5キロメートルほどの、強い潮流に揉まれた深海でムール貝を育てています。スペインと同様、ムール貝はロープで養殖されますが、ここではロープはブイとブイの間に水平に張り巡らされ、水中ネックレスのようになっています。半年に一度ほど、養殖業者が何千個ものムール貝がちりばめられたロープを巻き上げます。彼らはムール貝を大きさ別に選別し、成熟したものは洗って殻を剥き、ペレス・ラフエンテ社に送り、ガリシアのムール貝と同じように味付けして缶詰めします。
ポルトガルのフィニステラ養殖場は、養殖管理協議会(ASC)の厳格な世界基準を満たしたヨーロッパ大陸初の養殖場です。
環境:小さな環境戦士
Photo by Ken Etzel
他の養殖魚や養殖生物とは異なり、ムール貝は養殖業者からエサや肥料、淡水資源などの投入物を必要としません。しかし、この地味で小さな二枚貝は、たんに持続可能なシーフードの選択肢というだけではなく、回復させる力を持っています。
パタゴニア プロビジョンズのムール貝は、ガリシアではいかだに吊るされたロープ(a)で、サグレスではブイの間に張られたロープで育ちます。太く群生したロープは、稚魚や他の海洋生物に生息地を提供し(b)、最終的に豊かな海をもたらします。ムール貝は浮遊する植物プランクトン(c)を食べ、他のエサは必要ありません。小さな入水管(d)を使って水を吸い取り、エラで摂取した植物プランクトンを窒素やリンといった水中の他の一般的な要素とともに濾過します。この2つの栄養素が過剰になると藻類が大量発生し、他の水生生物の酸素を致命的に奪ってしまいます。つまり、ろ過された水(e)を着実に排出することで、ムール貝は他の多くの海洋生物のために水質を改善しているのです。ムール貝ひとつにつき1日10~15ガロンの水を処理することができます。
文化:流れを変える
スペインのガリシア地方とポルトガルのサグレス地方の両方で、ムール貝事業は養殖場で働く地域社会を支え、伝統を強化し、未来への希望を築いています。
スペイン:ムール貝と貝の養殖は、ガリシアのヴィラノヴァ・デ・アロウサを数十年にわたって支えてきました。21世紀初頭、大規模な缶詰工場が労働力の安い国へとスペインを離れはじめ、村の経済と生活様式が脅かされるようになりました。家族経営の缶詰会社、コンセルバス・アントニオ・ペレス・ラフエンテは、地元農家への支援を強化することを決めました。1892年に家族でコンセルバス・アントニオ・ペレス・ラフエンテを創業したフアン・ペレス・ラフエンテは、「私たちが生き残る唯一の方法は、会社の歴史の中でずっと続けてきたこと、つまり地元の製品、生産物、そして生涯続く伝統的なレシピに集中することだと決断しました」と語ります。二枚貝が収穫されるいかだに近い場所に位置する同社は、ムール貝の缶詰で有機認証を取得したEU初の企業です。
ポルトガル:ムール貝はポルトガルの南端に自生していますが、ムール貝の養殖がはじまったのは2010年で、私たちのパートナーであるフィニステラ社がポルトガルの手つかずの海でEUオーガニックの事業を立ち上げました。フィニステラ社は、アルガルヴェ地方の地元労働者とともに、北アフリカの労働者を雇用し、EU市民権取得の道を提供しています。また、同社はASC(水産養殖管理協議会)の認証も受けており、社会的責任や環境への影響を最小限に抑えるための厳しい基準を満たしています。これらの基準には、労働者に対する安全で公平な労働環境の提供、適正な賃金、労働時間の規制などが含まれます。
パートナー:科学に導かれて
スペインとポルトガルの両国で、第三者監査機関がムール貝の生産を監査し、品質と環境保護を保証しています。
スペインでは、CRAEGAがムール貝の養殖を監査しています。CRAEGAは、ガリシア地方の製品がEUの高いオーガニック基準を満たしていることを確認するためにスペイン政府によって設立された組織です。ポルトガルでは、ジュネーブを拠点とする世界的な試験・検査・認証機関であるSGSが監査を行っています。
2009年に制定されたEUの養殖有機認証では、化学物質汚染を防ぐためにいかだやロープに合成材料の使用を制限すること、汚染物質が混入していないか水域を検査すること、ムール貝の種子を責任を持って調達することを義務づけることなど、ムール貝に関する包括的なガイドラインを定めています。また、ムール貝の養殖業者は、その方法が他の海洋生物や鳥類に害を与えないよう監視されています。CRAEGAは、ロープの数を制限したり、ガリシア海域での養殖を地中海原産のムール貝種のみに許可したりするなど、独自の要件を積み重ねています。ポルトガルでは、SGSの監査によってEUの有機基準が満たされていることが確認されています。