サーモンを夢みて
サーモンを夢みて
ディラン・トミネ
私は夜、サーモンの夢を見ます。荒海を滑るように泳ぎ、生まれた川のかすかな匂いをたどるサーモン。汽水の湾では、月が起こす潮の干満と淡水を感じます。渦を巻く峡谷の深い水の下では、水面を叩く雨と銀の泡が流れ星のように飛び去って行きます。
真夏の太陽の下では、もっと理論的にサーモンのことを考えます。この潮流のどこにいるだろうか?どの深さに?どの餌に食いつくだろう?そして、こんな想像もしています。エルワ川の伝説的な45 kgのキング・サーモン(ダムがなくなった今なら戻って来るだろうか?)や、アイダホ州のソートゥース・マウンテンズで産卵するベニザケ、かつてピュージェット湾を埋め尽くした、圧倒的な数の魚。
海からはるかに離れた場所で見つかる深海の成分のことも考えます。遡上するサーモンが大自然の栄養のベルトコンベアとなり、はるか遠くの山々に運ぶのです。伝統的なファースト・サーモンの祭典や、1万年にわたり人間と魚がともに進化してきたストーリーを思います。父と釣りをした幼少期の記憶から、その後の年月で訪れた場所や出会った人びとまで、私自身の人生を思い返します。そのすべてがサーモンと密接につながっています。もちろん、私の小さな子どもたちについて、そして私たちとこの魚との共通の関わりについても考えます。
しかし、このような思いや夢と共に、懸念もあります。恐れと言うべきかもしれません。私たちは、ワイルドサーモンの最後の群れを目撃する世代になるのでしょうか?増加を続ける人口は、容赦なくその破壊的な力をふるっています。私たちは水がしみこまない舗装やエネルギー需要、資源採取により、無責任にもサーモンに害を与えています。誤ったふ化放流や、混獲の可能性がある非選択的な漁業、開放型の養殖場など、サーモンの人気ゆえに害を与えている場合もあります。サーモンの保護に関しては、ダム(皮肉にも適切な比喩です)の水漏れを1つ塞ぐと、手の届かない位置に新たに2つの水漏れが発生しているように感じることが頻繁にあります。
しかし、私は子どもたちと、その次の世代のことを再び考えます。私の思いは、自由に流れるエルワ川の急流をさかのぼる巨大なキング・サーモンや、空気のように澄んだ高山の湖水を泳ぐベニザケの群れ、ピュージェット湾に次から次へと押し寄せるサーモンなどの光景に引き戻されます。そして私は、子どもたちや次の世代の子どもたちが戻ってきて、その光景と出会うことを夢見るのです。
ディラン・トミネはパタゴニアのアンバサダーで、『Closer to the Ground: An Outdoor Family's Year On The Water』、『In The Woods and At The Table』の著者。家族と共にワシントン州ピュージェット湾にある島に在住。